彼女を抱えて戦場から離れた。
そこから離れてしまえば血なまぐさくて騒がしかったのが嘘のように静かなもので、その静けさに祭りの帰りのような気分にさせられる。
手を掴めば小さくて速くて儚い鼓動が伝わってくる。
その消えそうな鼓動に不安になった。このまま消えてしまうのではないかと怖くなった。
その消えそうな鼓動に癒されるような気持になってしまっている自分もいた。
ふと思う。今自分はどんな顔をしているんだろう。
消えかける心音の愛しさに頬を緩めているのだろうか。
それとも消えそうな心音の悲しさに泣いているのだろうか。
はたまた、両方だろうか。
矛盾した感情の中で、どうかどうか消えません様に、と祈る。
消えそうな鼓動も好きだけれど、普段の君がいないときっと酷くサミシイよ。
そう思って強く抱きしめた。
強すぎたのか少し寝苦しそうな反応が返ってきて、消えないだろうという事を確信した。
この温かい鼓動に感謝しながら拠点テントへ向かう足を少し速めた。