ピエロが滑稽に街頭で踊っていました。 その周りを子供が囲んで、ピエロが何かするたびに驚いたり笑ったりを繰り返しています。
その光景を青い目が遠巻きに見ていました。 その目の持ち主は白髪が混じった黒髪の男の子です。彼はただ無表情にピエロと子供を眺めていました。
そのとき
「終わったで。……ピエロ、見てるんか?」
路地裏から声が響きます。ぬれた音も響きました。
男の子はそちらは見ずに、路地裏に響いた声に返します。
「今日は早んですね。何だったのですか?骨ですか?それとも動物?」
「今日は妖獣や。小さかったからな。早く終わったんや」
男の子は聞いているのか居ないのか、ピエロを見つめたまま頷きました。
「…?どうしたん…?元気ないんか?それともピエロ見たいんなら…」
「ねぇ。僕がピエロみたいになれれば、オカアサンは僕を愛してくれますか?」
路地裏の声はしばらく黙った後、寂しそうに言います。
「…そうなったら、ええね。」
しばらく一人と路地裏の声はピエロを見たまま黙っていました。
「帰ろうや。ここは寒い」
男の子が頷いて返事をすると、男の子は路地裏から出てきた手に引かれてその中に消えていきました。
少し静かになった街頭ではピエロが踊り続けています。
狂ったように楽しそうに哀しそうに嬉しそうに苦しそうに踊り続けています。
男の子がピエロのような滑稽な笑顔を作るようになったのはそれから。
男の子がピエロのような道化た話し方をするようになったのはそれから。
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