ゴーストタウンを歩いていました。
ヘッドホンをつけて、そのコードを突き刺して自分の音を聞きながら。
囲まれたことに気づいたので、ヘッドホンをはずして自分の音を聞くのをやめました。
以下少々グロテスクな表現が含まれます。
少し早くなったその心音たちがボクを囲んでいました。
その音たちは静かだけれど賑やかで、神経を研ぎ澄ませればよく伝わってくるように思いました。
その音たちはまるで優しい音楽を奏でているようでしたので思わず微笑んでしまいました。
さらにその音たちが止む瞬間といったら堪らないのです。
ゴーストにも死ぬ恐怖という物がやはりあるのでしょうか。
心の臓に刃物を突き刺すと、とても早くなって儚げに消えてゆくのです。
例えるならそれはクラシックの最後の盛り上がりのような物で。思わず笑みがこぼれてしまいました。
それらを聞いているうちに残っているのが一匹になっていました。
ボクはゆっくり心音を聞かせて欲しい気分になっていたので、慎重に、慎重に戦いました。
弱らせて、彼の四肢を切り落としました。
血に塗れたくはなかったので、血がかからないように気をつけました。
動かない事を確認して彼の横にしゃがみます。
そして彼の心臓の辺りに手をかざします。
そうすると手からはっきりと心音が伝わってくるのです。
速いテンポのリズムでした。心音と一緒に傷からぴゅうぴゅうと血が出るさまも、また可愛らしいと思いました。
すぐにその音も儚く消えてしまいました。
*
静寂に包まれてしまいましたので、ヘッドホンをつけてまた自分の音を聞き始めました。
けれどもやはりさっきの音たちのほうが素敵だと思いました。
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